【VLAD】

この世界には、誰もが知っているこんな伝承がある。



かつて、一人の大魔法使いがいた。


その者は竜の言葉を自在に操り

竜族を従えていた事から

【竜王】

と呼ばれていた。



ある時

大地に無数の【裂け目】が生じ

【妖素】と呼ばれる毒の空気が

地上へ溢れ出した。


【妖素】に冒された大地は

人間が住むことのできない地に変貌した。


後に【魔境】と呼ばれる瘴気の地は

少しずつ大地を蝕んでゆき、人々の住む地を奪っていった。


この事態を前に【竜王】は

【魔境】の脅威から人々を守る為

己の全ての魔力を使って

十体の分身を創り出した。


のちに【十王】と名付けられた

分身たちは

【魔境】を封じる【結界】となった。


【十王】は

選ばれた【継承者】と共に封印を担い

【魔境】から人々を守る守護神として

崇められた。


そして

分身を創り出した【竜王】は

その力の全てを使い果たし

人々の前から、姿を消した。



時は流れ



地上は【魔境】から生まれた

【魔獣】たちが闊歩する

混沌とした世界となった。


【裂け目】が生まれるたびに【魔境】は広がり続け、

【十王】の加護が届かない大地を

飲み込んでいった。


人間の世界は

【十王】が鎮守する国

【十王国】だけになりつつあった。


そして

【魔境】に住処を飲まれかけている人々は

自らの土地を守ろうと…


【十王】の奪い合いを始めた


【十王】の【継承者】は常に狙われた


あるいは継承を解くため、命を奪われた


後に【継承戦争】と呼ばれるその時代は


【十王】の継承が

目まぐるしいサイクルで行われ


人から人へ


土地から土地へと渡っていくうちに…


何体かの【十王】と【継承者】の所在は


戦乱の歴史の中に埋もれ

消えていった