掌の記憶
「ったぁ!あ~、うぅ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
『クラウディア様』
「何でしょうか」
『陛下がああやって
”小さい前習え”をしたまま、
かれこれ5分以上経過しようとしているのですが。』
「そうですねぇ、
未知との遭遇に思いのほか手間取っていますねぇ」
『そろそろ助け舟を出して差し上げてもよろしいでしょうか?』
「駄目ですよ。賭けの約束なんですから」
『しかし、このままでは日が暮れてしまいますが。
また手の角度だけ変えてフリーズしましたし。』
「一体何の入射角を測っているのでしょうねぇ」
「・・・クラウディアさん。」
「はい。
なんでございましょう、陛下?」
「俺が悪かったので許してもらえませんか?」
「ええ勿論ですわ、陛下。
その子を抱っこして頂ければわたくし、全て許します。」
「・・・・・・・・」
『…では私は仕事が残っておりますので、これにて。』
「おい待て見捨てるなマクスウェル。
アル!アルガン!」
「往生際が悪いですよ、”お父様”?
早くしていただけますか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
①試練
わたしにとって 世界は
怖いことや 悲しいことばかりがやってきて
そんな世界を見たくないから
なるべく 下ばかりを見つめ
歩いていた
顔を覆った 長い髪は
わたしと 世界を隔てるお守り
おそろしいものを遮る 結界
その隙間から見える世界に
なんの光も なかったはずなのに
今は確かに
光が見えた
②光差す
約束して
私がいなくなった後も
兄様を守るって
『約束』を交わした 6日後の朝
彼女は静かに息を引き取った
それから何年 時が経っても
あの日の『指きり』の感触が
未だに私を奮い立たせ
未だに 私の心を引き裂きにくるのだ
③最期の約束
あの大きな手で頭を撫でられるのが好きだった
守られていると安心できて
この手の持ち主と同じように
強くなりたいと勇気が出た
あの小さな頭を撫でるのが好きだった
髪がぐしゃぐしゃになるまで撫でまわすと
小さな弟は いつも
弾けるように笑っていた
④兄と弟
「・・・・・・」
『・・・・』
「・・・なんだ、結構フツーの名前だな。
隠すほどのものか?」
ゴンッ
「いってぇ!」
⑤刻まれた名
いいかい? ドリー
ここから先は お前ひとりで行きなさい
ああ怖いね よくわかるよ
でもお前は勇敢な子だ 必ず行けるよ
よくお聞き
その横穴を ひたすら真っすぐに進むんだ
やがて湖に出るから
そこにある フクロウの像の前で待っていなさい
母上はもう先に行ったから
私が行くまで お前が母上を守るんだよ いいね?
さぁ バロンも一緒だ 寂しくはないよ
私のことは心配いらない
何があっても 何が聴こえても
決してここへ戻ってはいけない
さぁ…
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ドレイク お前は素晴らしい子だ
いつかこの先 どんなに怖くても
大事な人の為に 立ち向かわなくてはならない日が きっと来る
その『力』は それまでとっておきなさい
そして その日が訪れたら
迷うことなく その『力』を使いなさい
さぁお行き 愛しい我が孫よ
またあとで
必ず会おう
⑥惜別
あたたかい
風も 日差しも
わたしを引き上げる あの人の手も
思い出す様に見る夢
束の間の自由
幸福で
あの時の日差しのような
あたたかな日々
あの日 あの手をとったこと
今でも後悔はしていません
もう二度と戻らない日々だとしても
あの頃のあたたかさが 私を生かしてくれる
もう十分
宝物は もう十分 頂きました
やさしいお父様 お母様
あたたかい 雨のようだったあの子
私の宝物
ありがとう
そして
ごめんなさい
⑦過ぎ去った夢
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